ブドウ糖毒性とは高血糖が膵β細胞に働いてインスリン分泌を低下させてしまうことと、高血糖によるインスリン感受性の低下と考えていただければよいと思います。  高血糖により、インスリン分泌が低下するのには24時間あれば十分とされています。しかしこの短期間の高血糖によるインスリン分泌の低下は血糖値が下がることによって解消します。しかし高血糖の持続が短期間ではなく年単位など長期にわたるようになると膵β細胞数の減少、繊維化がおきインスリン分泌量は減少してきます。この膵β細胞の変性は長生きして亡くなられた患者さんの膵臓では軽度にとどまるのに対し、長年高血糖で亡くなった患者さんでは変性が非常に高度であることが報告されています。   正常血糖から高血糖になるまでにはインスリンの感受性の低下にともないインスリン分泌量の増加が生じ、その分泌量の増加が限界を超えると高血糖となります。ひとたび高血糖を呈するようになると、この高血糖によりインスリンの効果が低下し、またインスリン分泌が低下してしまうのでさらに高血糖を呈する悪循環を形成します。   当院に来られる患者さんには過去の検診の結果をすべて持参してもらっていますが、それらを拝見すると、HbA1cが5%台から6.5%程度になるまでは数年かかっていますが、それを超えると翌年は8-10%と一気上昇しているケースが多いことに気づきます。直線的に上昇するのではなく、指数関数的に上昇するので、毎年検診を受けているが今年急に悪くなったと言ってこられる方が非常に多い理由と考えられます。   来院時のHbA1cが10%を超えていても今年初めて高くなったという方の場合は食事と運動だけで5%台のコントロールを維持できている方が多数おられます。10%を超えると、これはものすごく血糖値が高いからという理由で薬を処方されてしまうことが多いようですが、今年初めて高くなったという場合で尿ケトンー、全身状態が不良でなければ、まず薬は必要ないのではないかと思います。一方で、高血糖が数年も続いているのに放置してきたという方は食事運動だけではなかなか5%のコントロールにはなってくれません。年単位で高血糖が続くとブドウ糖毒性が回復せず、インスリン分泌が低下してしまうと考えられます。また、一度5%台の良いコントロールとなっても食事運動療法をやめてしまって血糖値が高くなり、その後改善、悪化を繰り返すとだんだん良くなりにくくなってきます。これも高血糖の繰り返しによるブドウ糖毒性のためと考えられます。   ブドウ糖毒性によるインスリン分泌低下を防止するためには、家族に糖尿病がいる人の場合、高血糖にならない、すなわち糖尿病にならないようにすることが一番良いのですが、A1cが5.5%を超えたことがある人は、その時点から食事療法、運動療法を考えるべきです。A1cが10%を越えた場合でも今年初めてなら、食事運動で回復できると思います。以前からA1cが高いという方、薬なしは難しいかもしれませんが、放置すればするほどブドウ糖毒性により膵β細胞機能は低下します。1日でも早く血糖コントロールを改善し、ブドウ糖毒性を取り除くようにしないとインスリン注射が必要なほどインスリン分泌が低下してしまうことになります。糖尿病は高血糖になっても症状が出ないので病院に行かずに放置している患者さんがたくさんいますが、早めに見つけて早めに対処すれば後への影響が少ないといえます。糖尿病も早期発見早期治療が重要ということです。